Categoryアイルランド
アイルランドの多彩な文化を在住者がご紹介!7つの楽しみ方と日本と違うケルト文化!
絶景や遺跡が点在する緑の国土に、ケルト文化の息遣いを感じるアイルランド。在住10年目の筆者が、アイルランドの習慣と行事、音楽、ダンス、スポーツ、文学などアイリッシュカルチャーをご紹介。文化をテーマに、伝統と歴史の宝庫アイルランドを巡ってみませんか?
この記事に登場する専門家
アイルランド在住ライター
Sumiko
アイルランドとは?
こんにちは!アイルランド西部からSumikoがお届けします。
アイルランド共和国(The Republic of Ireland)は、ヨーロッパ北西、イギリス(グレートブリテン島)の西側にあるアイルランド島の南部を占める国。エメラルドの島とも呼ばれるだけあって常緑の国土が美しく、神話や妖精の国の雰囲気に満ちています。
この記事では、歴史と伝統のあるアイルランドの文化や習慣、それらを体験できるスポットをご紹介します。アイルランドの概要や主要都市を中心とした観光情報はこちらも参考にして下さいね。
アイルランドの文化①ケルト文化
ヨーロッパ文化の源流、「ケルト文化」は、その起源や定義に諸説あります。紀元前7世紀、古代ギリシア人が、アルプス山脈の北側、ドナウ川周辺に住む異民族をケルトイ(celtoi)と呼んだ総称がケルト人(Celts)で、単一人種ではないんですね。
ゲルマンやラテン民族のはるか前、ヨーロッパ大陸を広範囲に支配するも、古代ローマ帝国との闘いに敗れ、西方の島々に撤退を余技なくされた民。その島のケルトを引き継ぐのがアイルランドの文化と言われる一方、遺伝子研究では、イベリア(スペイン)の流れをくむという説もあって興味深いですね。
文字を持たない古代ケルト人は、口承で神話を伝え、土着信仰のドルイト教(Druid)は、自然と一体化した多神教でした。その世界観、絶えぬ変化(死と再生)は、渦巻などケルト模様に見られ、古代からの強いメッセージを感じます。
5世紀に布教の始まったキリスト教と融合した謎多きケルト文化。研究は続いており、発見や新説を聞くたびに、ロマンを掻き立てられています!
ケルトの神話&アイルランドの歴史伝説
一般的に「ケルト神話」と呼ばれる伝承の大多数はアイルランドの神話。大きく4つの物語群、神話(Mythological)、アルスター(Ulster)、フィオナ(Fenian)、歴史(Historical)があります。
アイルランド人の祖先とされるミール族(ゲール民族)以前は神々が支配。その中心がダーナ神族、トゥアサ・デー・ダナン(Tuatha Dé Danann) 。先住のフィル・ボルグ族を征服し、さらに怪物の一族フォモール族を マグ・トゥレドの戦い(Cath Maige Tuired)で倒しアイルランド島を治めました。
その後、上陸してきたミール族に敗れ、西の海の彼方にある常若の国、ティル・ナ・ノーグ(Tír na nÓg)に逃れ、精霊シーとなって暮らしているとか。荒くれる海の底に竜宮城さながらの楽園があると思うと、そんな気がしてくるから不思議です。
ダーナ神族は、四種の神器(The Hallows of Ireland)、立石(リア・ファル)、ルーの槍、ヌアザの剣、ダグザの大釜を持ち込んだとされ、その一つ、立石はタラの丘に現存するのです!
ケルト以前からの聖地ニューグレンジ
ニューグレンジ(Newgrange)は、紀元前3200年頃の先史時代の遺跡で、ボイン渓谷遺跡群(The Palace or Mansion of the Boyne/Brú na Bóinne)の一つ。墳墓と言われ、神話や天文学的な側面も指摘されています。そんなアイルランドの誇る世界遺産に行ってきました。
直径約80mの塚を97個の縁石が囲み、入口の石板の渦巻模様は必見!石室のアーチ型の屋根は、5000年以上経った今も、高い防水性を保っているとは驚きです。約19mの通路の奥に十字型の石室があり、冬至の明け方には、太陽光が最奥の空間まで入射して照らしだします。
なんと、ガイドの案内による見学では、冬至の疑似体験できるんです!
説明の後、石室の照明が消えると、隣の人すら見えず不安になるほど真っ暗!
冬至の日の出の方向から、電灯を照らし再現された光は、明るくありがたみを感じました。
ニューグレンジの観光情報
ダブリンから北に車で50分(51km)、各種ツアーもあり。遺跡へは、施設内のシャトルバスで向かい、ガイドともに見学。(ビジターセンターの改修により、屋内展示は閉館。遺跡ツアーは平常通りで、整理入場券(改修中無料)は駐車場にて発券(2019年11月現在)
Heritage Ireland: Brú na Bóinne Visitor Centre
ニューグレンジのサイト(英語)
www.heritageireland.ie
アイルランド人の心の故郷タラの丘
タラの丘(The Hill of Tara)は、新石器から鉄器時代に古代の儀式や埋葬が行われた丘陵で、アイルランドの神話や文学にも登場するアイルランド人の聖地と言えます。
丘の中心には、全周1kmと一番大きな、王の砦(The Enclosure of the Kings/Ráth na Ríogh)。確認できるなかでは最も古い、捕虜の墓(The Mound of the Hostages/Dumha na nGiall))や、二重の輪で8の字を描いたようなコーマックの居城(Cormac's House/Teach Chormaic)と王座(The King's Seat /Forradh)があります。
有名なのが四種の神器の一つ、王座にある立石(Stone of Destiny/Lia Fail)。ここで歴代の上王(the High Kings)の戴冠式が行われ、142の王が君臨したとか。正統なタラの王が触れると石が叫ぶという伝説もあり、古代の声が聞こえてきそうです。
また433年、セントパトリック(St.Patrick)が訪れ、レアリー上王(High King Laoghaire)と対峙し、キリスト教の布教を許された地とも言われていて、歴史的な地ですね。
タラの丘の観光情報
ダブリンから北西に車でM3経由43分(43km)。各種ツアーもあり。
丘への入場は年中可能。ビジターセンターの開館時期(春~秋)や入場料(大人5ユーロ)の詳細はサイト確認。
Heritage Ireland: Hill of Tara
タラの丘のサイト(英語)
www.heritageireland.ie
ニューグレンジ&タラの丘 - Google My Maps
二つの遺跡を訪れよう!ⒶNewgrange ⒷHill of Tara
drive.google.com
アイルランドの文化②季節の祭り・行事
ケルト由来の土着文化とキリスト教の影響がしだいに溶け合っていきました。アイルランドの行事にはその伝統が色濃く残っています。季節に合わせてアイルランドを訪れ、アイリッシュとともに楽しんでみませんか。さっそく春から見ていきましょう!
春の到来を祝うセントブリジットデー
アイルランドの春は2月1日、ケルトの祭りインボルク(Imbolc)とキリスト教が融合したセントブリジットデー(St. Brigid's Day)から。イグサを十字に編んだブリジットクロス(Brigid's Cross)をドアや窓辺に飾り、春の訪れを喜び、火災や邪気を払います。節分にイワシの頭とヒイラギを飾る風習と似てますね。学校の授業で作るほど馴染みのクロスですから、アクセサリーの人気デザインの一つ、見かけたら手に取ってみて下さいね。
緑色に染まる日!セントパトリックスデー
セントパトリックスデー(St. Patrick's Day)は、3月17日。5世紀にアイルランドにキリスト教を布教した守護聖人パトリック(St. Patrick)の命日とされ、国民の祝日です。
アイルランドの国花、三つ葉のクローバー、シャムロック(Shamrock)を飾り、緑の妖精などに扮したパレードが各地で行われます。アメリカをはじめ、アイルランド系移民の多い地域でもパレードが行われ、日本でも見られます(2019年版)。
ローカルなパレードでは、セントパトリックを先頭に、トラクターがけん引する台車の上で歌い踊る地元の子供たちが、沿道に向けて投げるお菓子を拾ったり、知人の扮装を楽しんだりとのんびりしていますよ。もちろん、パレードの後はそのままパブに流れ込むのがお決まりです!
卵とうさぎで復活と春の訪れを祝うイースター
イースター(Easter)は、十字架で生涯を閉じたキリストが3日後に復活したことを祝う復活祭。キリスト教の重要な行事で、敬虔な信者は、動物性食品や贅沢を控える断食(Lent)をします。
イースターの時期は毎年変わります。春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日、イースターサンデーを中心に祝うためで、20日前後違うこともあるんですよ。毎年確認(Western/グレゴリ暦)して、休暇の予定を組むのが楽しいホリデーです。
生命と復活のシンボルである卵を色付けしたイースターエッグを飾るほか、隠した卵を探すエッグハント、スプーンやお玉に卵を乗せて走るエッグレースなど、楽しい行事もいっぱい!また多産で繁栄の象徴であるうさぎ、イースターバニーもおなじみのキャラクターです。
イースターには、チョコレートの卵やうさぎで店頭がにぎわい、十字模様の入ったホット・クロス・バン(Hot Cross Buns)というパンも毎年の楽しみです。軽くトーストしてバターをつけるとサクサクしておいしいですよ。
仮装だけじゃない!アイルランドのハロウイン
ハロウイン(Halloween)は、ケルトの収穫祭サウィン(Samhain)が起源です。古代ケルト歴では、11月1日が新年。大晦日の10月31日は、あの世の扉が開き、先祖の霊が訪ねてくる、日本でいうお盆のような日。
そこにキリスト教の11月1日の万聖節(諸聖人の日/All Hallows) が融合し、魂を祭る行事になったとされます。
ハロウインといえば仮装ですね。先祖の霊に紛れてついてきた悪霊が、災いを起こさぬよう、魔よけの焚き木をしたり、仮面をかぶり魔物に扮して追い払ったことが起こりです。
子どもには待ち遠しい、Trick or Treat(お菓子くれなきゃいたずらするぞ)と家々を巡る楽しい日。仮装で過ごすハロウイン登校をする学校もあるんですよ。思い思いのコスチュームを自慢し、袋いっぱいのお菓子に大興奮の一日です。
また、カボチャを切り抜いた怖い顔の提灯、ジャックオーランタン(Jack-o’-Lantern)も、魔よけです。アイルランドでは、ケルト由来でかぶ(Turnap)を使う場合も。大きさや硬さも手ごろで掘りやすいです。くり抜いた中身はスープにして温まります。
ユニークなのが、ブラック(Barmbrack)という丸いレーズンパンを囲み、切り分けて食べること。伝統的には、豆、小枝、布、コイン、指輪を生地に入れて焼き、自分の一切れに入っているもので占います。ちなみに筆者は指輪(結婚)入りを食べて移住しました。本場のハロウインゲームはいかが?
家族や大切な人々と幸せを願うクリスマス
アイルランドのクリスマスは、伝統的に12月8日にツリーや飾りつけをして始まり、24日のクリスマスイブ、25日のクリスマス、26日のセントスティーブンスデー(St. Steven's Day)をへて、年明けの1月6日のリトルクリスマス(Little 又はWoman's Christmas)まで。元旦にサンタがいるのは不思議な光景です!
行き交う挨拶はハッピークリスマスHappy Christmas/ノリグ・ホナ・グイッツNollaig Shona Dhuit)!
子どもの大好きなクリスマス。アドベントカレンダー(Advent calendar)のお菓子やおもちゃ入りの窓を毎日開けて指折り数えます。街にも、サンタに欲しい物を伝えるコーナー、サンタにプレゼントリストを投函するポスト、ちょっと早めのギフトがもらえるサンタのワークショップ(Santa's workshop/experience)など盛りだくさん。
イブの夜、サンタにミルクとミンスパイ(mince pies)、トナカイのルドルフに人参を準備するのは子どもの役目。クリスマス当日の朝、プレゼントをツリーの下に見つけて大喜びの子どもの様子に、パパママサンタはホッとするのです。
親族や友人が集うクリスマスディナーは、ターキーやハムに付け合わせの野菜、ローストポテト、クリスマスプディング(ドライフルーツたっぷりのケーキ)など、家庭ごとの伝統が受け継がれていて、日本のおせちと同じだと感じます。レストランのメニューにクリスマスディナーがあったらぜひ試してみてください。
クリスマスマーケットや、ディスプレイに彩られた町並みでショッピングを楽しむのもこの時期ならでは、暖かくして雰囲気を味わってくださいね!
アイルランドの文化③パブ文化
アイルランド=アイリッシュ・パブという方も多いのでは?どんな田舎にも教会とパブは必ずあると言えるほど、生活に密着。アイルランドに来たら一度はパブをのぞいてみましょう!
アイリッシュの生活にかかせない社交の場
パブ(Public House)は、日本の居酒屋というより、むしろ老若男女が集う公民館!冠婚葬祭はもちろん、伝統音楽の生演奏や大画面でスポーツ観戦もあるエンタメの中心。旅行者との一期一会にもオープンな交流の場なのです。
パブの習慣①居酒屋じゃない!飲んで語る場
パブには種類があります。食事しながら飲む習慣がなく、昔ながらのパブは基本飲むだけ!夕方に開き、食事を済ませた客が立ち飲みで盛り上っていると、ちょっと入るのに勇気がいると思います。
パブが初めて又は飲まない方は、昼間も開き、食事を提供しているパブのほうが入りやすく、カフェのように利用するのもおすすめ。食事のラストオーダーは21時ごろとレストランより早めです。
飲み物を頼む場合は、カウンターで注文し、飲み物を受け取るときに支払います(Cash on delivery)。その後、席に座って飲んでもOK。腰かけイス(stool)は、気軽に移動でき、次々と社交を展開するパブにぴったりです。
食事をする場合は、テーブル席に座り、持ってきてくれたり、席や黒板にあるメニューを見て頼みます。飲み物も運んでもらえます(快いサービスには10%ほどチップを)
パブの習慣②持ち回りでおごって飲み続ける?
グループで飲む場合、ラウンド(round)という順番に人数分を買う習慣があります。混雑時に各自がカウンターで注文するより効率的で「It's my round」(私のおごり)と言います。
何杯も飲むことになり、自分の番で姿を消すのはルール違反なので、あまり飲めない場合は、参加せず自分のペースで買うほうが無難だと思います。
都市部ならパブをはしご(Pub Crawl)して、一晩で違った雰囲気を味わうのもあり。体調とお財布に相談しながら楽しい夜を!
本場のパブで注文してみよう!
注文には、パイント(pint 568ml)という単位を使います。
お試しには、ハーフパイント(284ml)がおすすめ。
「A pint of 〇〇, please」「Can I have a pint of 〇〇?」〇〇をパイントください
ハーフパイントの場合は「A glass of 又はA half pint of 〇〇, please」
黒ビールならギネス(Guinness)、コーク産のマーフィーズ(Murphy's)やビーミッシュ(Beamish)、レッドエールのキルケニー(Kilkenny)、サイダー(Cider)と呼ばれるりんごや洋梨を原料にした酒、ブルマーズ(Bulmers)などあります。
ウイスキーは、ジェムソン(Jameson)など銘柄に続き、「straight(ストレート)」「with water(水割り)」「with ice(氷割り)」「with soda(炭酸割り)」など好みを伝えます。
できたてを味わうなら蔵元へ!
各国で楽しめるようになったとはいえ、アイルランド本土での風味は格別。
さらに世界一フレッシュな一杯を堪能できるのは蔵元のツアーだけ!
Guinness Storehouse
ギネスストアハウスのサイト(英語)チケット購入はこちら(18.50ユーロ)
www.guinness-storehouse.com
Jameson Distillery Bow St.
ジェイムソン蒸留所のサイト(英語)チケット購入はこちら(17ユーロ~)
www.jamesonwhiskey.com
ギネスストアハウス&オールドジェイムソン蒸留所 - Google My Maps
世界一フレッシュな出来立てを楽しもう!ⒶGuinness Storehouse ⒷJameson Distillery
drive.google.com
アイルランドの文化④音楽
どこか懐かしいアイリッシュトラッド(Irish Trad)と呼ばれる伝統音楽の調べ。日本でもBGMとして自然と耳に馴染んでいたりします。パブで繰り広げられる即興の場、陽気な踊りの曲に体を揺らし、古くからの歌唱曲に目を閉じて聞き入る・・・そんな夕べに繰り出そう♪
楽器とリズムの特徴
古くから使われてきたのは、国の紋章でもあるハープ、バイオリンのフィドル(Fiddle)、パイプ(イリアンパイプス/ Uilleann Pipes)です。縦笛のティンホイッスル(Tin Whistle)、六角形のアコーディオン、コンサーティーナ(Concertina)、太鼓のバウロン(Bodhran)に加え、ギターやバンジョーもよく見かけます。
踊りのリズムで、リール(Reel)は4分の4拍子、1小節に8分音符(♪)が8つ入る早いテンポです。
ジグ(Jig)は3拍子。1小節に入る8分音符は、ダブルジグは6拍子、スリップジグは9拍子、シングルジグは12拍子と、とてもリズミカル。体が自然にリズムを刻みだして止まりません!
どこでもライブ!生演奏の魅力
パブでのセッション(演奏)は、夜21時以降から始まることが多く、地元の演奏家が楽器を持ち寄り、談笑しながらセッティングするさまが、すでにアイリッシュのペース。今か今かと待ちきれない自分との差を感じます。
二人以上そろえばセッションのスタート。同じ曲を知っていれば、初対面でも一緒に演奏を楽しめるのが特徴。
もともと口承で伝えられた伝統音楽、地域や演奏者ごとに違いがあるうえ、楽譜通りというより、一曲を変化をつけながら繰り返して弾くので、その場限りのライブの醍醐味がたまりません!
また、路上でギターケースなどを前置き、バスキング(busking)しているミュージシャンに遭遇することも。しばし足をとめて演奏を楽しみ、投げ銭するのもアイルランドの日常です。
アイリッシュトラッドの伝統文化を体感するなら
アイルランド西部にあるモハーの断崖にもほど近い、アイリッシュトラッドのメッカ、Doolin(デューリン)。1.5kmほどの一本道にあるパブ、Gus O'Connor's Pub、Fitzpatrick's Bar、McGann's 、McDermott's で本場ならではのセッションを!
Pubs in Doolin - Google My Maps
アイリッシュトラッドのセッション巡りをするなら
drive.google.com
アイルランドの文化⑤アイリッシュダンス
16世紀より400年にわたるイギリス支配下にあったアイルランド。伝統文化が全面禁止されるなか、ひそかに家庭で歌い継がれた旋律とともに、窓の外から踊っているのがわからぬよう、下半身だけでステップを踏むダンスが生まれました。移民先のアメリカでは、タップダンスの原型となりました。民族意識と強かな反骨精神を刻むリズムに心を揺ぶられます。
娯楽から芸術の域へ
アイリッシュダンスは、大きく二つに分かれます。
グループダンスは、主に男女ペアが数組で踊ります。ケーリー(Céilí)は、複数で列や輪を作って踊り、30種類ほどあります。セット(Set)は、四組のペアをセットとしてスクエアを作って踊ります。どちらも、地域の娯楽として親しまれてきました。筆者も見よう見まねで参加して目がまわりました!
ソロダンス(ステップダンス)は、アイルランド語で「古いスタイル」を意味し自由度の高いシャンノース(Sean-Nós)、上体、腕、足の位置にルールがあるオールドスタイル(Old style)、オールドを原型に詳細なルールを設けた競技用ダンスは、高難度のジャンプやステップ、舞台映えする装飾のドレスなど華やか、『リバーダンス』などの興行ダンスに発展しました。
習い事としても人気のアイリッシュダンス、5歳位から始める子もいます。練習を重ねて競技会レベルの技術を磨いたダンサーのステップには釘づけになります!
アイリッシュダンスショー&『リバーダンス』を観る
アイリッシュダンスのステップとアイリッシュフードを一緒に楽しめるショーや、25周年を迎えた『リバーダンス』の本格的なステージなど、ダブリン滞在のハイライトにどうぞ。
Dublin's Best Irish Dancing Shows
ダブリンでアイリッシュダンスショーを観るなら(英語)
dodublin.ie
Riverdance: The Original... The Best
リバーダンスのサイト(英語)チケット購入はこちら
riverdance.com
アイルランドの文化⑥スポーツ
スポーツもアイリッシュの生活に深く浸透し、特有の国技もあります。スタジアムにひいきのユニフォームやチームカラーを身に着けたファンが集結し、アイルランド各地のパブの大スクリーンの前でも、パイント片手に声援を送る姿は馴染みの光景です。
アイルランドの国技 ゲーリックゲームズを観る!
ハーリング(Hurling)は、ケルト神話にも登場するアイルランド発祥、世界最速の野外スポーツ。木製スティック(ハーリー/Hurley)で、テニスボール位の皮のボール(スリッター/sliotar)を操り、ゴールを競います。ボールの時速150kmもあるとか!とにかく目にもとまらぬ速さで、展開が早いところが面白いです。アイルランド国内では、毎年9月の選手権の決勝戦に83000人を動員する人気ぶり、国民的スポーツです。
ゲーリックフットボール(Gaelic football)は、サッカーとラグビーを混合したような競技。17世紀に人気が高まり、19世紀後半に現在の形になりました。ネットとH型のクロスバーが一体化したゴールに、サッカーボール大で若干重めのボールをシュートし、得点を競います。
最初みたときはサッカー?と思いましたが、特徴は、手を使ってよいこと!(4歩まで移動可、ボールをバウンドすれば更に4歩まで、つま先で蹴り上げてボールをキャッチしながら進むソロなら制限なし)。パスは、ボールを蹴るか、こぶしや手のひらで打ちます。ラグビーのようなタックルやスクラムはなく、独特のルールを理解するほどに楽しみが増しますね。
確執を乗り越えて!人気のラグビー&サッカー
伝統的スポーツ同様、ラグビーやサッカーも大人気、ラグビーワールドカップの盛り上がりは記憶に新しいですよね。
歴史的支配者イギリス発祥のスポーツであるラグビーやサッカー。自国のゲーリックゲームズを盛んにという向きは根強く、ゲーリック体育協会(GAA)(1884年設立)は、かつて会員のプレーを認めず、保有するスタジアムで試合が行われるようになったのは2007年以降です。
アイルランドラグビー協会(IRFU)が組織するアイルランド代表は、アイルランド共和国と北アイルランドから選出され、エンブレムはシャムロック。大会ではそれぞれの国旗を掲げ、Ireland's call(アイルランズ・コール)というラグビー代表の曲を斉唱します。背景を知るとなおさら歌声が沁みます。
サッカーは、1921年の連合王国からの分離にともない、アイルランド共和国が(FAI)、北アイルランドが(IFA)と独自のサッカー協会が生まれ、大会にはそれぞれの代表が出場します。
歴史的背景のあるなか、子どもから大人までスポーツに興じるアイリッシュ。地域のクラブで練習する子どもから明日のスターが生まれ、伝統スポーツも受け継がれているのが良いですよね。
スタジアムで観戦&ミュージアムで歴史を知る
ダブリンの、ゲーリックゲームズの本部GAAスタジアム、クロークパーク(Croke Park)や、リムリックの、アイルランドラグビー協会(IRFU)のトモンドパーク(Thomond Park Studium)では、試合観戦以外にも、博物館やスタジアムのツアーもあり、イベントも盛りだくさんです。
Croke Park (headquarters of the Gaelic Athletic Association (GAA)
クロークパークスタジアムのサイト(英語)GAA博物館&ツアーの予約はこちら
crokepark.ie
Thomond Park Stadium
トモンドパークスタジアムのサイト(英語)博物館&ツアーの予約はこちら
thomondpark.ie
アイルランドの文化⑦文学
ケルト神話やカトリックの影響もある神秘的なアイルランドの文学は、8世紀以降のゲール語の伝承と12世紀後半より英語で書かれたアングロ・アイリッシュ文学に分けられます。
イギリス支配下で弾圧されたゲール語の文学は、19世紀のアイルランド文芸復興によって息を吹き返し、伝承民話の編纂も行われました。古来の思想や情緒を反映し、抑圧の歴史を感じる皮肉とブラックユーモアの利いた作品が大きく開花しました。
ノーベル文学賞受賞者ぞろい!文豪の街ダブリン
イエイツ(William Butler Yeats)、ショー(George Bernard Shaw)、ベケット(Samuel Beckett)らノーベル文学賞受賞者や、ジョイス(James Joyce)、ワイルド(Oscar Wilde)など文豪を輩出してきたアイルランド。ダブリンはユネスコ文学都市でもあり、街角で銅像に出逢うことも。古来は口承で物語を伝えてきたところに文学的基盤があるのかなと思います。
ジョイスが意識の流れを表現した代表作『ユリシーズ』、主人公ブルームのダブリンの一日を記念したブルームズデー(Bloomsday)(6月16日)では、20世紀初頭にタイムスリップ!物語の舞台をめぐるのにピッタリですね。
ダブリンライターズミュージアム(Dublin Writers Museum)は、18世紀のジョージアン建築の邸宅が並んだパーネル界隈にある作家博物館。ダブリンゆかりの作家の原稿や初版本、愛用品などの展示と豪華な内装を合わせてじっくりとどうぞ(受付で日本語の説明書の貸出あり)
日本とアイルランド文化の架け橋ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)
アイルランド人の父を持つラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)は、2~13歳をダブリンの叔母の元で過ごしました。アメリカで新聞記者をし通信員として来日。英語教師の資格を得て松江に移り、小泉セツと結婚、現東京大学の文学教師も務めました。帰化し日本名は小泉八雲です。
幼少時代にケルトの伝承やアイルランドの怪談を耳にしたハーン。日本各地から集めた怪談話の『怪談』や『知らざれる日本の面影』などを英語で執筆し日本文化や風土を紹介しました。筆者の夫も著作から、秋の虫の音を愛でる等の感覚に興味を持ちました。
ダブリンの作家博物館以外にも、ハーンが叔母と休暇で何度も訪れたトラモア(Tramore)に、ラフカディオ・ハーン庭園があるので行ってみました。海岸を見渡す高台が気持ちよく、様々な植栽で彼の人生を表現した庭を、日本の草木や建造物を見ながらゆったりと回りました。ダブリンから南に2時間のウオーターフォード(Waterford)とあわせて訪れるのがおすすめです。
小泉八雲―ラフカディオハーン庭園、トラモア | Lafcadio Hearn Japanese Gardens
ラフカディオハーン庭園のサイト(日本語ページあり)
lafcadiohearngardens.com
知っておきたいアイルランドの習慣&マナー
習慣&マナー①喫煙
アイルランドは、世界に先駆けて壁に囲まれた職場を禁煙(2004年3月施行) にした国、パブを含む、飲食店内は完全禁煙です。その範囲は、建物の入り口や路上へも広がっており、公共エリアや観光地でも喫煙場所を確認してくださいね。
習慣&マナー②チップ
チップは日本にない習慣ですね。レストランやパブなどで、注文を取ったり、料理を運ぶなどの快いサービスを受けたら、10%目安(高級店などでは、請求書にすでに加算されている場合あり)カードで支払う場合は、チップのみ現金の場合が多いです。
カフェや軽食は、お釣りの端数(コイン)をレジ脇のチップ入れやテーブルに置いたりします。
習慣&マナー③挨拶・しぐさ・話題
挨拶や会話のときは、相手の目をみる、アイコンタクトが大切。相手を認識し敬意を払うサインなので、恥ずかしがらずに顔向けて「Hello」や「Hi」の挨拶をして下さいね。
相手に手の甲をみせて中指を立てるのは、最大級の侮辱サイン。アイルランドは、甲をみせての逆ピースサインも、侮辱を意味するので注意が必要です。
オシャベリ好きなアイリッシュ、隣り合わせただけで会話が始まることも珍しくなく、その人懐こさが魅力の一つ。ただあまり親しくない相手や、不特定多数が集うパブなどの場では、政治や宗教に関する批判や、北アイルランド問題、イギリスとの比較は避け、独立国として尊重した話題を心掛けると楽しく交流できますよ。
どのアイルランド文化から体感する?
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